「そもそもあれ、根拠あった?」は、たいてい会議の後で出てきます。その順番を前にずらす話です。ロジカルシンキングとは、難しい理屈を操る才能ではなく、主張と根拠が本当に線で繋がっているかを点検する手順。だから、練習の対象になります。なお、考えを整理して相手に伝える技術は別記事に譲り、ここでは自分の考えが正しいかを検証する側だけを扱います。筋道を立てて考える基本を、1枚の地図に整理します。
この記事では「ロジカルシンキング」を、筋道を点検する5つの視点で読み解きます。
「なんとなく正しい」を疑うところから
まず、私たちの話が緩くなる典型を押さえます。ひとつは結論だけを言って根拠を置かない形。「あの施策はやめたほうがいい」で止まると、聞いた側は判断できません。もうひとつは、感想と主張が混ざる形です。「なんかイマイチだと思う」は感想で、主張として扱うには根拠が要る。厄介なのは、根拠が弱くても声の大きさや勢いで通ってしまうことがある点です。通ってしまうから、検証されないまま進む。だからロジカルシンキングは、賢く見せる技術ではなく、自分の考えを自分で点検するための手順だと考えたほうが実務的です。ここから先の4つが、その点検の中身です。
事実と意見を分ける
最初の一手は、手元の材料を「事実」と「意見」に切り分けることです。事実は、見聞きしたことや数字のように確かめられるもの。意見は、それを見た自分の解釈・評価で、人によって変わるものです。「先月の問い合わせが2割減った」は事実、「もう限界だと思う」は意見。この2つが混ざったまま話すと、議論が噛み合いません。相手は事実の部分を否定していないのに、こちらは全体を否定されたように感じてしまうからです。やり方は簡単で、自分のメモを見返して「これは確かめられるか?」と一行ずつ問うだけ。確かめられないものには「私はこう解釈した」と印をつける。これだけで、話の土台が安定します。
「だから何?」と「なぜそう言える?」を往復する
事実と意見を分けたら、次は繋がりの点検です。ここで使えるのが、照屋華子・岡田恵子が『ロジカル・シンキング』で示す「So What?/Why So?」という2つの問い。上下方向に往復するイメージです。下から上へは「だから何?」——集めた事実から、いま答えるべき問いに照らして何が言えるかを絞る。ここで問いを忘れると、ただの要約になって使えません。上から下へは「なぜそう言える?」——出した結論を、下にある事実が支えているかを確かめる。片方向だけでは足りず、往復させることで詰まる場所が見つかります。
たとえば手元に「先月の問い合わせが2割減った」「離脱は入力フォームで起きている」の2つがあるとします。だから何? と絞れば「減った原因は集客ではなく入力の脱落だ」。次に なぜそう言える? と下を見ると、支えているのは離脱データ1本だけで、広告の出稿量を確かめていない。ここで詰まります。詰まった=結論が言い過ぎている、と自分で分かる。これが往復の効果です。
隠れた前提と「飛躍」を探す
点検で見落としやすいのが、言わずに置いている前提です。「値下げすれば売れる」の裏には「価格が理由で買われていない」という前提が隠れています。前提が違えば結論も変わるので、前提を一度口に出して書くのが効きます。あわせて注意したい飛躍が2つ。ひとつは、一部の例で全体を語ること。「知り合いの3人がそう言っていた」から「みんなそう思っている」へは飛びすぎです。もうひとつは、同時に起きたことを原因と決めつけること。売上が落ちた月にたまたま新しい施策を始めていても、それが原因とは限りません。関係があること(相関)と、原因であること(因果)は別。ここを分けて考えるだけで、判断の質はかなり変わります。なお「一部の例で全体を語る」は、抽象度の上げ方を間違えている状態でもあります。その往復の練習は 「抽象度を上げる思考」 にまとめています。
先に「反論」を自分で書く
最後は、いちばん手軽で効く方法です。主張が固まったら、それに対する反論を自分で1つ書いてみる。「この結論に反対する人は、どこを突くだろう?」と考えて、実際に文字にします。すると、根拠の薄い箇所や、都合の悪い事実を見ないふりしていた箇所が自分で見つかります。反論を潰せたなら主張は強くなり、潰せなかったならそこが本当に弱い部分。人に指摘される前に自分で見つけられるので、痛みも小さい。点検した考えを人に伝わる言葉にする技術は 「言語化力」 に書いています。まずは今日、自分が最近下した判断を一つ書き出して、「なぜそう言える?」を詰まるまで問うところから始めてみてください。たいてい2〜3回で詰まります。
まとめ:1枚の地図
ここまでの要点を「1枚の地図」にまとめました。さらに深めたい人は、下の参考書もどうぞ。

この地図の要点をテキストで読む
主張と根拠を"線で繋ぐ"(ロジカルシンキング — 筋道を立てて考える)
- "なんとなく正しい"を疑う
- 結論だけ言って根拠がない:感想と主張が混ざる
- 声の大きさで通ってしまう:検証されない
- 才能でなく点検の手順:誰でも鍛えられる
- 事実と意見を分ける
- 見聞きした事実はどれか:確かめられる
- 自分の解釈・評価はどれか:人により変わる
- 混ぜると議論が噛み合わない:まず切り分ける
- "だから何?"と"なぜ?"を往復
- 根拠から結論へ:だから何?:言えることを絞る
- 結論から根拠へ:なぜそう?:支えを確かめる
- 答えられない所が弱点:そこを埋める
- 隠れた前提と飛躍を探す
- 言わずに置いた条件はないか:前提を口に出す
- 一部の例で全体を語らない:範囲を確かめる
- 同時に起きた≠原因:因果と相関を分ける
- 先に反論を自分で書く
- 反対意見を1つ挙げてみる:穴が見える
- 答えられれば主張が強くなる:検証の効果
- まず1つの主張を書き出す:今日の第一歩
参考にした本
本文で触れた「So What?/Why So?」を体系立てて学ぶなら、照屋華子・岡田恵子『ロジカル・シンキング』が入り口に向いています。東洋経済新報社・2001年刊のロングセラーで、「重複・漏れ・ずれを防ぐMECE」と「So What?/Why So?」の2つを軸に据えた一冊。後半は論理の型を集めた実践編で、読み解くより手を動かす本です。※MECEを使った整理の実践は、本サイトの 「構造化して伝える——複雑を1枚に整理する思考」 で扱っています。

