AIでリサーチする——「調べる」を速くして、必ず確かめる

AIでリサーチする——「調べる」を速くして、必ず確かめる AI副業
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AIに聞けば、調べものは数秒で片づきます。厄介なのは、その答えが正しいかどうかは数秒では分からないこと。しかも文章が整っているぶん、確かめる気が起きにくい。だからAIでのリサーチは、腕前ではなく手順で決まります。速くする部分と、自分で確かめる部分を分ける。その線の引き方を、1枚の地図に整理します。

この記事では「AIでリサーチする」を、速さと確かさを両立させる5つの視点で読み解きます。

「速い」と「正しい」は、別の話

まず前提を分けます。AIが強いのは、知らない分野の見取り図を一瞬で出すこと。用語、論点、対立軸、関係しそうな制度——ゼロから検索して集めると半日かかるものが、数分で並びます。ここは遠慮なく任せていい。

問題は、その出力が「正しそうに見える」形で返ってくることです。語尾は迷わず、段落は整い、数字には桁がある。人は、整った文章を疑いにくい。検索なら「怪しいサイトだな」と一瞬で警戒できたのに、AIの回答にはその手がかりがありません。速さそのものより、速さが確認を省かせることが危ない。だから「気をつける」では足りません。裏取りを気分ではなく、毎回同じ順で通す手順に落とします。続く4つが、その中身です。

なお、本とAIをどう併用するかという一段上の話は 「AIに頼りすぎない学び方」 に書きました。ここでは、そのうち「調べる」の一工程だけを開いています。

まず「調べれば決着がつく問い」に直す

リサーチが空回りするときは、たいてい問いの形が悪い。「この補助金、うちみたいな個人でも使えるの?」と丸ごと投げれば、それらしい一般論が返ってきて、読んだあと何も決まりません。

そこで最初に、手元の疑問を2種類に仕分けます。ひとつは事実の問い——調べれば決着がつくもの。「この制度は会社員も対象か」「申請の期限はいつか」。もうひとつは判断の問い——事実が揃っても、最後は自分で決めるもの。「自分はどれを選ぶか」。この2つを混ぜたまま調べると、事実を探しているつもりで他人の価値観を集めることになります。

やり方は単純で、疑問を「いつ・どこ・誰の話か」まで狭めて、事実の問いに書き換えるだけ。あわせて「何が分かればこの調べものは終わりか」を先に決めておくと、無限に情報を集める事故が減ります。なお、AIへの問いかけそのものを鍛える話は 「問いを立てる力」 にまとめました。ここでは調べる前の問いの整え方だけを扱っています。

広げるのはAI、絞るのは自分

問いが決まったら、AIの使いどころを絞ります。広げる作業は任せ、絞る作業は自分で持つ。これが基本の分担です。文章を書く工程での分担は別記事に譲り、ここでは調べ物に限った線引きだけを詰めます。

任せていいのは、論点を10個挙げる/反対の立場の主張を書く/その分野で使われる用語と言い換えを並べる/初心者がつまずく箇所を挙げるあたり。どれも「見落としを減らす」方向の仕事で、多少ずれていても後の工程で落とせます。

逆に任せないのは、最新の数字、固有名詞、日付、金額、制度の細部。ここは学習時点の情報が古かったり、似た名前と混ざったりします。Web検索をするAIでも同じで、「実在するページを引いてきたが、その数字はそこに書かれていない」「古い年度のページを掴んでいる」は普通に起きます。「A社の今期の売上は」と聞いて返ってきた数字を、そのまま使ってはいけません。AIには候補を並べさせ、選ぶのは自分。指示の組み立て方そのものは 「プロンプトの『型』」 に整理しています。

出典は、自分で開く

ここが分かれ目です。AIが出典やURLを添えてくれると、確かめた気になります。でも、そのURLは実在するのに中身が要約とずれている/別の記事に繋がっている/そもそも存在しないことは普通に起きます。事実にもとづかない出力が混ざる、いわゆるハルシネーションです。

対策は地味で、必ず自分でURLを開き、要約された箇所を実物で見る。開けないURLは、その時点で無かったものとして扱う。そのうえで、可能なら一段ずつ一次情報へ戻ります。ニュース記事より、その元になった発表資料。まとめサイトより、官公庁の統計や法令の原文。誰かの解説より、企業の公式リリース。「誰が最初にそう言ったのか」まで戻れば、少なくとも「誰の責任で言われた話か」がはっきりします

ちなみに、この「元へたどる」やり方は私が編み出したものではなく、図書館のレファレンス(調べもの相談)では昔からの定石です。手筋をまとめて知りたい人は、記事末に挙げた本が早い。AIが要約を出してくれるぶん、元へ戻る力の差が、そのまま調べものの質の差になります。当面は人間側に残る作業です。

「都合のいい答え」を疑う仕組みを入れる

最後は、自分側のクセへの対策です。人は、自分の考えを支える材料ばかり集めてしまう。そこにAIが加わると厄介で、AIはこちらの前提に乗って答えてくれやすい。「この方針は正しいですよね?」と聞けば、正しい理由が並びます。集めた材料が増えるほど確信も増えるので、間違ったまま自信だけが育ちます。

だから、仕組みで打ち消します。ひとつは、必ず一度「この結論に反対する材料を挙げて」と頼むこと。反論が出てこないテーマは、そもそも調べ足りていません。もうひとつは、日付・数字・固有名詞の3つだけは例外なく自分で確認するというルール。全部を疑うと続かないので、崩れやすい3点に絞ります。文章を書く工程でもこの3点は確かめますが、調べる工程では「余裕があれば」を外して例外なしに引き上げます

まずは今日、気になっていることを1件だけ選んで、出典を開くところまでやってみてください。1件を最後まで通すと、どこで止まるかが分かります。調べた材料を文章にする段階は 「AIライティングの本質」 に書きました。

まとめ:1枚の地図

ここまでの要点を「1枚の地図」にまとめました。さらに深めたい人は、下の参考書もどうぞ。

「速さはAI、確かさは自分」の詳細マインドマップ:速い≠正しい・調べる問いに直す・広げるのはAI、絞るのは自分・出典は自分で開く・都合のいい答えを疑う
図をクリックすると拡大表示できます
この地図の要点をテキストで読む

速さはAI、確かさは自分(AIでリサーチする — 速くして、必ず確かめる)

  • 速い≠正しい
    • 見取り図は一瞬で出る:そこは任せる
    • "それっぽさ"が確認を省かせる:最大の落とし穴
    • 気合いでなく手順にする:毎回同じ順で通す
  • 調べる問いに直す
    • 事実で決着がつくか:つかないなら判断の問い
    • いつ・どこ・誰の話か:範囲を先に切る
    • 何が分かれば十分か:止め時を決める
  • 広げるのはAI、絞るのは自分
    • 論点・反対意見・用語を出させる:得意な仕事
    • 最新の数字と固有名詞は苦手:任せない
    • 候補を並べて自分で選ぶ:選択は人が持つ
  • 出典は自分で開く
    • 要約だけで信じない:実物に当たる
    • 存在しない出典が混ざる:URLを開いて確認
    • 一次情報まで一段ずつ戻る:公式・原文・統計へ
  • 都合のいい答えを疑う
    • AIは同意してくれやすい:反証を頼む
    • 日付・数字・固有名詞は自分で:3点だけは必ず
    • まず1件を最後まで裏取り:今日の第一歩

参考にした本

「元へ戻る技術」をまとめて学ぶなら、小林昌樹『調べる技術 国会図書館秘伝のレファレンス・チップス』(皓星社)が入り口に向いています。著者は国立国会図書館で15年にわたりレファレンス(調べものの相談)に従事した人で、本書は全14講。「ググる」とは何をしていることなのかという問い直しから始まり、ネット情報源の使い分け、人物を調べる、新聞記事を探す、雑誌記事の索引を選ぶ、といった具体的な手筋が並びます。AIの本ではありませんが、AIが出した要約の裏を取るときに必要になるのは、まさにこの側の技術です。2022年の刊行から刷を重ねているロングセラーで、Kindle版もあります。

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